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そして更に悪いことに、毒霧はその効果を高めるために、空気に対して比重を重くしてあった。空に拡散してしまうのではなく、地表に留まって地上人類に対してより高い効果を及ぼすためである。
毒霧は下に向かう。
比重が重いからだ。
取り払われた紫外線侵入防止壁の一部に穴が開き、そこから、比重の重い毒霧が地下の洞窟に向かって侵入してきた。
ドンメルだけでなく全ての将兵が感じていた。
明らかに目の痛みが増している。
明らかに毒霧のニンニク臭気が強くなっている。
洞窟にいた二万五千の地底帝国軍の将兵は、パニックに陥った。
「でっだい、でっだい、でっだい、」
ドンメルは声を限りに叫び続けた。
地上に近い前線の側から、毒霧のニンニク臭がどんどん増していった。
なおかつ、紫外線侵入防止壁が剥がされた部分から、地底帝国人がこれまで三千年間経験したことが無かった鋭く強い紫外線が降りかかってきた。
ドンメル元帥が叫んでいる命令が「撤退」であることがわかると、将兵は我先に地底へと続く穴へ向かった。
ある者は穴の淵で他の者に圧し潰され、ある者は穴の下の踊り場で上から来た者に圧し潰された。
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