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ドンメルは気丈にも、他の将兵とは反対の方向へ走った。
間違えて部下が破ってしまった紫外線防止壁を修復するためである。
ドンメルは一人紫外線防止壁の脇にしつらえられた梯子によじ登り、壁の遮光カーテンを片端から閉じていった。
強い光がドンメルに降りかかっていた。
しかしそれでも目を見開いて、ドンメルは閉じるべきカーテンを凝視した。
そして閉じた。
辺りが元の暗さに戻った。
洞窟の将兵は冷静さを取り戻しつつあった。
デッドラー総統閣下、と、梯子の上でドンメルは思った。
気が遠くなってきた。
私は、と、ドンメルは思った。
私は幸せでした。
この地上征服作戦第二陣を、デッドラー総統閣下と共に歩めたこと。
幸せでした。
本作戦は失敗だったかもしれません。
しかし決して、
決して無駄ではない。
無駄ではない。
そこまで考えたところで、ドンメルの意識は潰えた。
地底帝国人きっての強靭な肉体を持つドンメル元帥だったが、紫外線には勝てなかった。
紫外線病がドンメルを襲った。
急性紫外線病。
最後の力を振り絞って、ドンメル元帥は叫ぼうとした。
ディープ・デッドラー!
しかし、それは声にはならなかった。
ドンメルは、梯子の上から脆く崩れ落ちるように落下した。
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