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意識を変えよう、と私は思った。死んでしまったものは戻らない。後悔しても。
そう思って見ると、鳥が飼われている大きな金網が見えた。中にいるのはオレンジ色の綺麗なフラミンゴの群れだ。
「今日も夕暮れだ」
「今日も帰れなかった」
「今日も出れなかった」
「大空を飛びたい」
「巣に帰りたい」
「飛びたい」
「帰りたい」
フラミンゴたちも声を持っていた。一羽ずつ。暗い声。声。
なんて暗い鳥たちなんだ、と私は思った。ならば応えよう。私は顔の前で手を振った。数メートル上方で金網は瓦解し、フラミンゴの住まいと外の世界の区別が無くなった。さあ、飛ぶがいい。思い切り飛んでいくがいい。
しかしフラミンゴは飛び立たなかった。誰一人として羽を広げて自分のしたかった思いを実行に移す者はいなかった。あらかじめ羽を切られているのか。それとも、空がもう薄暗くて飛べないのか。はたまた、飛び方を忘れてしまったのか。
「飛びたい」
「いつか飛びたい」
「帰りたい」
「いつか帰りたい」
まだ言っている。
好きにすればいい。
思いを実現するもしないも、あなた方の自由だ。
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