其の9 無敵の人

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 夜になっていた。  夜の間中、私は歩いた。  隠れる必要も、地下に潜る必要も無かった。  私は歩いた。  地底帝国のある、富士山麓へ向かって。  それはさながら動物大行進だった。  私の後に動物たちがついてきた。  白熊やオオカミ、黒豹やアムール虎、珍しい鳥や小動物、看板動物のパンダまで揃っていた。上野動物園の動物だけじゃない。犬や猫もいる。小鳥や爬虫類、昆虫もいる。  「肉肉肉」  「眠い眠い眠い」  「土が恋しい」  「家に帰りたい」  「空を飛びたい」  いろんな声が飛び交う。私の心に届く。  彼らは私に付き従っている。理由はわからない。多分、彼らの本能が嗅ぎ分けているのだろう。身の危険と身の安全を。  私たちの行く手は開けていた。車は走って来なかった。交通規制が敷かれたのだろうか。ところどころで警察車両や装甲車によって道が封鎖され、その前で銃火器が使用された。私は銃弾や砲弾をいちいち振り払う必要さえなくなっていた。ただ歩いていれば弾が私を避けた。私だけではない。私たち一団を避けた。銃弾や砲弾に加えて、地雷や手榴弾などの爆発物も発火した。一つや二つではない。幾つも発火した。発火はしたが、私たちを焼くことはなかった。爆発の衝撃でなぎ倒されることもなかった。そんなふうにして道に置かれた装甲車と警察車両の間を抜けると、私たちの前にまた道が拓けるのだった。
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