其の2 宇宙統合軍への道

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 地底帝国軍地上征服作戦第二陣。恐怖の毒霧作戦と謳われた地底帝国軍による三千年ぶりの地上侵攻は失敗に終わった。地底帝国はドンメル元帥を筆頭に128名の戦士を失った。これは地底帝国軍五千年の歴史に残る大敗である。この原因はどこにあったのか。失敗から一年を経て、作戦を企てたヘムラー技術相の元に全ての情報が集まりつつあった。  地底帝国の技術の粋を集めて開発された毒霧。最も忌み嫌われているニンニク臭で地上人類を抹殺し、かつ、ガスの黒色により有害な紫外線を遮り、地底帝国人の進撃を可能にする。千年ほど前から周到に計画されたその作戦は、完璧な筈だった。千年にわたって、地底帝国人はこの計画に基づき、作戦の準備を周到に推し進めていたのだ。  毒霧精製のためのニンニクは、地底帝国軍拠点所在地の富士山麓だけでなく、長野、埼玉、群馬、千葉に渡って広範囲に収穫された。地上人類が畑で育成したニンニクに対して、地下の坑道から接近、採集するのである。その際には地底帝国の存在を悟られることがないように、イノシシの仕業であると偽装することも怠らなかった。また、黒色塗料はイカ墨によって精製された。イカは海洋生物である。地底帝国海軍の特殊部隊が夜間に駿河湾近海に出撃し、イカ釣り漁船からイカ墨をたっぷり内包した釣りたてのイカを奪取した。等々。千年にわたる不断の努力の結果、ボンベ三千本の毒霧精製に成功。今回の地上征服作戦第二陣決行に至ったのである。
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