其の2 宇宙統合軍への道

4/19
67人が本棚に入れています
本棚に追加
/210ページ
 ヘムラー技術相は腕組みして考え込んでいた。  実は、ヘムラーはこの結果をある程度予測できていた。まず、毒霧の黒色による紫外線遮蔽性に関しては、ヘムラー自身の計算によれば、ボンベの必要量は三百万本であった。今回のボンベ数は三千本なので、千倍のガス量が必要となる。三千本のガスの精製に千年かかっているので、その千倍となると、一千万年の精製時間が必要ということになってしまう。  また、ニンニク臭についてであるが、ヘムラー技術相の地上人類に関する情報源である折り畳み式地デジ携帯から流れてくる放送には「魅惑の宇都宮餃子特集」「浜松餃子を食べに恋」「ニンニク大好きっ娘大食い特番」などの番組があり、それらを見るにつけ、悪い予感がしていた。もしかすると、地上人類はニンニク臭に耐性があるのではないか、と。  これらの情報は、いずれも作戦開始前に入手できていたのだ。ヘムラー技術相の明晰な頭脳を持ってすれば、この作戦に無理があり、失敗に終わることを事前に見抜くことができた筈である。そう、今にして思えば。大敗を喫した後の、今にして思えば。  全ては後の祭りである。
/210ページ

最初のコメントを投稿しよう!