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ドバッ。
顔面に圧力を感じた。それは水だった。黒い人が顔面にドバドバ水を浴びせかけてくる。この至近距離では風の力が使えない。顔面が歪む。圧力が大きくなる。息ができない。首が折れる。更に水圧が高まっていく。意識が薄れていく。
圧力が止まった。
「気を失っちゃ駄目駄目」
意識が戻ってくる。
また圧力が来る。至近からの水攻めが始まる。口の中にも鼻の中にも目の中にも水が入ってくる。水圧に押される。逃れられない。また意識が遠のいていく。
そして圧力が止まる。
「まだまだ。まだまだよ。坊や。そろそろ熱くなくなったかい? 燃やされた傷は癒えてきた? 何? 寒い? 冬だもんなあ。水浴びしちゃって。寒いよなあ」
ボゥ。
今度は火だ。ルミアンの鼻先に火が灯される。
「どこがいい? 目から行く? それとも鼻?」
熱ッ。
駄目だ。逃れられない。風の力も使えないし瞬間移動もできない。圧倒的だ。力の差は圧倒的。
僕はここで死ぬんだ。そう思った。
痛いのは嫌だなあ。でもこの人は許してくれそうにない。
熱くて痛くて苦しいんだろうなあ。
苦痛と喪心の間を往復しながら、ルミアンはぼんやりとそう考えていた。
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