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「ところでヘムラー技術相。質問だが」
「何かね」
「私は地上人類の言語を理解することができん。貴奴らが降伏をしてきた場合に、その条件を吟味できぬかも知れぬ」
「条件? 妙なことを言うね、ドンメル君」
背後からデッドラー総統が現れた。左手にはグラスを持っており、赤ワインが注がれている。
「ディープ・デッドラー」
ドンメルとヘムラーが敬礼する。
ここは紫外線侵入防止壁直前の最前線だ。総統がこんな現場にまでいらっしゃるというのは異例中の異例。ドンメルとヘムラーは今回の作戦の重大さを改めて意識した。
「条件など無いのだよドンメル君」
「は」
「忘れたのか。かつて地上人類が我々地底帝国人を侵略したという事実を。地上人類が我々を地下深くに追いやったという歴史を」
「は。胸に刻んでおります」
「条件など無いのだよ。降伏も無い。皆殺しだ。地上人類は殺戮あるのみである」
「は」
「その陣頭指揮を取るのだ。ドンメル君。地底帝国の歴史に貴様の名前が刻まれるぞ」
「は。恐悦至極」
「地底帝国軍の進撃は全ての地上人類の殺戮を意味する。ドンメル君、時は来た。我が将兵に気勢を上げさせよ」
「は」
ディープ・デッドラー!
ディープ・デッドラー!
ディープ・デッドラー!
洞窟に地底帝国軍の気勢が鳴り響いた。
怒涛の如く。
それは、地下に追いやられ五千年に渡ってサバイバル生活を余儀なくされた地底帝国人の、怨念の雄叫びでもあった。
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