わからない

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 牽制のつもりかと思ったのですね。それなら、いくら落ち着いたように見えてもご立腹か、それともよほど悲しんでおられるか、いずれにせよあんなに綺麗な女性をいつまでも悲しませている訳にもいかんと休憩時間になってから、同僚の携帯電話に連絡を取ってみたのですね。そうすると繋がらない。電源が入っていないか電波が届かないところに、というあのアナウンスが流れる訳です。よほど山奥にでも女と旅行しているのだろうかと思いました。それで、少し僕も腹が立った訳です。有休ですから別に非は無いのですが、こちらが必死に働いているというのに奥様を悲しませて、と思ったのです。  山奥でも電話ぐらい繋がる?そうですね、最近はアンテナでしたっけ、そういうのも増えていますからね。そう、ここも繋がりますからね。便利なものです。  まあそれはそれとして。まあ、そんな訳でちょっと苛立っていたもので、また仕事が終わったらもう一度連絡してやろうと思い仕事に戻ったわけですが、今度はまた別のところから電話があった訳です。それが、今度はね、警察だったんですよ。しかもY県の県警だと言います。前職ですか?都内でした。だから不思議に思ったのです。まあ考えてみればどうせまた不倫旅行だろうと思っていたので、それ自体におかしなことは無かったのですが。そしたらそのY県警の方がね、言ったんです。おたくの会社の社員と思われる人間の遺体が上がったと。     
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