アフター☆アーク

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   「等々、この時が来たか…」 極東の島国の名峰富士の地下500メートルをくり抜き、作られた要塞が大きく震える。ドクロ型の仮面をつけた怪人達のまとめ役、幹部怪人“カーネル・ボーン”は心地好い音楽を聴くように、その音を聞いていた。彼の所属する悪の組織ゾットは、秋の番組改編…いや、勇敢な正義のスーパーヒーロー、ヒロイン達の活躍により、壊滅状態にまでなっていた。 漆黒の室内唯一の光点であるモニターには味方側の戦闘員、新怪人、 再生怪人を含めた全てが光輝く彼女、彼等に蹴散らされ、爆発や残骸の中を逃げ惑う様子が映されていく。 (やはり、叶わないな。連中には…) 納得するように頷く彼に味方からの通信が入ってくる。 「カーネル、“ザリガニーソ”だ!こっちの戦闘砲台、味方の巨大怪人、皆やられた。 どうやら、俺達も最後のようだぜ?兄弟?」 戦闘初期からの同僚である中級怪人の言葉は気軽な様子だが、状況の逼迫性は手に取るようにわかった。ボーンは腕に取り付けたラップトップを操作し、全ての怪人達に指令を送る。 「了解だ。ニーソ、全部署に伝達、すべてのゾット構成員は本要塞から、撤退しろ!これは我等の総統を含め、幹部怪人の総意である。」 「なにぃっ?最後まで戦わせろよ!」 通信に割り込んできたニーソの抗議は予測済み。もちろん、おあつらえ向きの提案を用意してある。 闘争本能の塊である彼なら、このまま彼女達と壮絶な相打ち、自身の最期を望んでいる事だろう。だが、それをさせる訳にはいかない。長い付き合いのボーンだ。 彼を納得させる言葉は用意しているし、その理由も把握している。分厚い甲殻面の裏には 仲間を想う熱い心が流れている事を… 「ニーソ、気持ちはありがたいが、撤退の護衛はお前にしか務まらん。我等の戦場はまだある。だから頼んだぞ?」 「……くそっ…そっちも…死ぬんじゃねぇぞ…」
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