再会

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 しばらく歩くと柿の木があり大きな実をつけていた。 人家もなく穴場のようだ。 少年は転がってる大きな岩に上り柿をもぎ始める。 「あ、あと……一個」  もう少しで届くところを指で宙をかき泳ぐようなそぶりをする。 珠子がそっと手を差し伸べてもぎ取り少年に渡した。 「あ、ありがとうございます」 「どういたしまして」  珠子が笑うと、少年もにっこり笑う。 戦災孤児であるはずなのに屈託なく明るい。 「ねえ。友の家に住んでいるの?」 「うん」 「子供たちはいっぱいいるの?」 「えーっと僕いれて五人だよ」  珠子の質問になんの警戒も見せず彼は答える。 「そうなのね……。ちゃんとご飯とか食べてる?」 「うん。あんまりないときもあるけど……。でも、戦争してる時のほうが辛かった。今は人の物を盗らなくてもちゃんとしたらもらえるんだよ」  明るく言うが珠子は少年が盗みを働きながら生き延びてきたことに胸を痛めた。 しかし今は違う様でほっとする。 「そう……。あ、あのこれ少しだけど……」  頭陀袋からチョコレートを取り出し手渡す。 「わあっ。チョコレートだ!お姉さん、いいの?」 「うん。みんなでちゃんと分けて食べてね」 「うん!」 「じゃ、さよなら」 「ありがとー。さよならあー」  少年はかごの柿の上にチョコレートをのせて嬉しそうに帰っていった。
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