祝言

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 浩一の提案で当時にしては珍しく、キリスト教会で結婚式を挙げることとなった。  参列者は珠子と一樹のみだ。  親戚と使用人の目を気にし、派手にしたくないという気持ちと、 葉子の自分のために贅沢をしてほしくないという希望で、隣町でひっそり行われる。  衣装も葉子のためによそ行きのワンピースを仕立てた程度で、浩一もスーツを用意した。 一樹は学生服を着、珠子は初めてのワンピースに興奮をしている。 タクシーを呼び、少し狭い車内でやはり初めて乗る自動車に珠子は、はしゃぎ窓の外の流れる景色を見ていた。 「兄さま、見て。みんなゆっくりねえ」 「車って早いね」 一樹も興味津々で、運転手の動作を注意深く見ている。 「そろそろ、着くよ」 浩一が見えてきた金属製の十字架を指さした。  車を降りて、教会の前に立つ。 小高い丘に建つ細長く白い建物は見慣れない建築で皆、下からすくいあげる様に屋根の上の十字架まで見上げた。  重々しい扉を押し開くと規則正しく長椅子が並べられ、中央に一人の外国人が立っていた。  長身で細長い手足、髪は薄く、ほぼ白髪の中にキラキラと金色の髪が混じっている。 珠子は薄いブルーの瞳を珍しそうに見ている。 「ヨウコソ」  初老の宣教師は穏やかな微笑みを浮かべ歓迎する。 「沢木浩一と妻の葉子です」  浩一は深々と頭を下げた。 「このタビはおめでとうゴザイマス」 流暢な日本語を話すこの神父は、もう日本で十年生活をしながら布教活動をしているらしい。 「早速ですが、よろしくお願いいたします」 「こどもたちは席についてくだサイ」 
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