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「カツサンド、うまいな。」
涼太が呟く。それを翔が聞き逃すわけがない。
「うまいよな。揚げ物とパンの組み合わせ最高。これ知らないやつとか人生絶対損している。」
俺が揚げ物が好きでないことを揶揄しているのだろうか。一緒に飯を食べに行ったことなど何度もあるから俺の食の好みなどわかりきっているだろうし。
揚げ物なんて体に悪い、将来絶対後悔すると心の中で反撃する。
「お、食うか?」
涼太がカツサンドの欠片を俺に差し出す。ありがとうと言って受け取り、食べる。油っこいカツは全然美味しくなかったが、うまいなととりあえず呟く。
リア充系の涼太が平凡な俺に構う理由は、おそらく引き立て役としてキープしていたいからなのだと思う。涼太は外見こそ目立つが、成績やスポーツ面ではそう振るわない。話術もイマイチで、話はそんなに面白くない。だから、整った容姿の割にクラスの中では意外に目立たなかったりする。それが本人は気に食わないのだろう。自分より華やかな人間と付き合うよりは、自分よりも目立たない人間と付き合ってその自尊心を保っているのだろう。だが、翔ではその意図があからさますぎるから、翔以上自分以下の俺を仲間に入れたのだと思う。そしてたまに自分以下であることを確認しようとして、俺の嫌いなものを勧めてくる。それを俺が素直に食べるところを見て、コイツは俺に逆らわないとか思っているのかもしれない。
翔も、うっすらとその考えを察しているのだろう、お前が自分より上などとは認めないとでも言いたげに、俺に対してマウンティングしかけてくる。
でも、俺は二人とは友達をやめられない。クラス内でも人間関係が固まってしまった今、新しいグループになんて入れないだろうし、ぼっちなんて絶対嫌だ。
カツサンドの濃すぎるソースが口の中にまだ残っている。パンと一緒に買ったウーロン茶で味をごまかす。
これが、俺の友情の味か。
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