楓のダイエット

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 それは自分が一人暮らしをしたいと知っていての姉の助言だった。姉の一人暮らしが決まってから「青学系の大学行って一人暮らししたい」と毎日のように言っていた。  と、トントン、と部屋のドアをノックする音がした。  「咲ちゃん、楓ちゃん、雪が降ってるよ」  母親がドアを開けて入ってきた。姉と2人で窓に駆け寄り、カーテンを開けた。真っ黒な空から小さな粒が一定の早さで降り、静かに落ち、消える。  「すごい、ホワイトクリスマスだね」  姉はうっとりとした。しばらく見続けると、雪が雪でなく見えてきた。雪、ゆき、ユキ・・・マシュマロ。  「この雪、全部マシュマロだったらいいのに」  外に出て空に向かって大きく口を開け、降ってくるマシュマロを次から次へと受け止める。口の中でとろけ、まるでパーティー状態だ。「楓ちゃんらしいね」と、母親は笑ってくれた。  「あー、楓がそんなこと言うからマシュマロ食べたくなっちゃったじゃん」  姉にまで幸せな気持ちが伝染した。  「そうだ、久しぶりにココアを入れる?もちろん、マシュマロを浮かべてね」     
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