2 飲んでしまったがゆえに…

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 神社で過ごすうちに、ナミはここで暮らしておらず、夕方まで「学校」という施設で何かを学んでいることや、神社の敷地内であれば自由にしていられることがわかった。  まーちゃんはナミが来る朝と夕方しか顔を見せないが、こー君は気づくと俺のまわりをうろちょろし、まるで自分の部屋のようにくつろぐ始末だ。今も、腹を丸出しにしてぐーぐー寝ている。こうも無防備になられると、危害を加える気すら起きないのが不思議だ。いっそ、こー君を味方に引き入れるというのもありか?という考えも浮かんだが、自分のばあさんの命を差し出そうとしたナミのことだ。躊躇なく「まーちゃんがいるし、どうぞどうぞ」と言いかねず、意味なさそうだ。  毎朝、毎夕、呪文のように「神様になろう」と言われるのを覚悟していたのだが、大外れ。ナミは天気や何か食べたいものはあるかなど、他愛もないことしか口にしなくなった。外の大きな木の上で寝転んだままでいる俺を学校帰りのナミが見かければ、なぜかうれしそうな顔をして「そこ、気持ちいい?」と聞くのが不思議で仕方ない。逃げようとしている、と警戒するのが普通だろう。  ばあさんも定期的にやってきたが、こっちも持参した美味いコーヒーを飲みながら話したり、将棋とかいうチェスのようなものを教えるだけ。将棋はルールの違いに慣れると面白く、時間を潰すのに最適な遊びとなった。  もしかして、神うんぬんは忘れたのかもしれない。そう思わないでもないが、わざわざ確認などしたくもない。俺から切り出して、興味があるなんて勘違いされたら、たまったものではない。  そんなぬるま湯につかりきった生活が続くと、つい余計なことを考えてしまう。  ナミは、自分の親よりも近い存在のばあさんを殺すと言う俺に「神様になってください」と頼んできた。そのばあさんは、優しいだけじゃなく悪い神さんもいるから大丈夫だと笑う。
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