2 飲んでしまったがゆえに…

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「悪さんが来てから、木が生き生きしてる」 「……枯れ木じゃないか。そんなの勘違いだ。もしくは、そう思いたいだけだ」 「違うよ。いつ皮が剥がれ落ちて、倒れてもおかしくないほど生命力がなかった木が、しっかりそびえ立っている。触った感じが全然違うもの。原因で考えられるのは、悪さんの存在だけだし」 「もし、俺が影響を与えているんだとしたら、枯らすほうだろう」 「枯れるってことは、まだ生命力が残っていた証拠でしょ。ここにはそれもなかったんだよ。悪さんの力がいいものなのか、悪いものなのかはわからないけど、強い力が木を蘇らせたのは間違いない。と思う」  最後にトーンが弱まったが、それ以上反論するのはやめておいた。人間は自分の好きなようにとらえる生き物だと思い出したからであり、納得したわけではない。 「百聞はなんちゃらだし、実際に見てきてよ」  ナミにうながされ、渋々外に出ることにした。覚えのない恩恵について延々と話されるよりはマシだと思ったからに他ならない。適当に時間をつぶして戻るつもりだったが、意識して観察してみると確かにナミの言うとおりだった。皮はひび割れ、ひ弱な印象しかなかった木が艶のある姿に変貌しており、まるで生き返ったようだ。  気になり始め敷地内をくまなく見て回ったところ、俺が寝っころがり休んだ木や触った覚えのある木は程度の差こそあれ、生気が戻っているようだったが、足を踏み入れていない場所は、ナミのいう「生命力の感じられない」木や草で覆われていた。その場にとどまり草や木の根を触ったり弄ってみるも、すぐに変化は現れない。どうやら、即効性はないようだ。木々の変化が真に起こっているのであれば、数日の時間を要することになる。
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