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「悪さん、こんなとこで何してんの? 探しもの?」
振り返ると、こー君が興味津々といった体で待ち構えていた。ナミに言われて来たのならば、俺がここにいる理由の察しはつくだろうから、偶然居合わせたのかもしれない。
「いや。お前こそ、何してる」
「見回りだよ。こんなでも、一応、狛犬だからお役目を全うしなければ!」
およそ頼りにならない守り手だ。この草木の変化についてこー君に聞いたところで、深く考えることなく「さすが悪さん!」と明るく肯定するだけに違いない。
「まーちゃんはどこにいる?」
「本殿じゃなければ、脇にある分社じゃないかなあ」
「わかった」
予想通りまーちゃんは本殿に隠れるようにある別の建物、分社にいた。入り口に背を向けて座り、ただじっとしている。ぼんやりしているのではなく、何かに集中しているようなピリリとした空気感に声をかけるのをためらってしまった。
「何か御用ですか? こーなら、外にいると思いますが」
「ああ。いや、ちょっと用があって」
そう言うと、いぶかしげな顔をして振り返ったまーちゃんと向き合う形になった。マジマジと見たのは久しぶりだったため、このとき初めて気づいたのだ。
「ちっちゃ! え? あいつの相棒なんだろ? 全然、大きさ違ってるぞ!」
考えるより前に言葉が飛び出ていた。それくらい驚きだった。こー君が中型犬くらいの大きさになっているのに比べると、まーちゃんはまだ小型犬だ。
「ああ。こーはあなたの部屋に入り浸っているようですから。そのせいで成長がはやまっているものと思います」
当たり前のことを言うな。そんなことが続きそうな口ぶりだ。俺の部屋が原因って、どういうことだ。
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