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「あそこが、元は神のいる部屋だったからか?」
「そうだとしたら、そもそもこんなに小さくなってないでしょうね。あなたの力の影響を受けて…ということではないですか」
聞こうとしていた答えがいきなり出てきて、うなってしまう。本当にそんなことが起こりえるのか。
「むー。いや、俺はあいつに何かしようと思ったことはないぞ。第一、仮にあったとしても逆だ」
「あなたが意図的に成長させたわけではないでしょうが、力とはそういうものだと思います」
「どういうことだ。俺の力なのに、俺の意図とは関係ないってことか」
露骨にため息をつくと、まーちゃんは子供に教えるように説明を始めた。
自分の元を離れたモノが相手にどういう影響を及ぼすか、完全にコントロールなどできるはずがない。例えば、相手の息の根を止めてやろうという意図で力を使ったものの全うできなかったことがあるならば、それもあなたの「意図」と相手の影響がイコールではなかったといえる。影響のズレの度合いについては、個体差や相性などが絡んでいても不思議ではない。
淡々とそう諭されると、確かに。そういうこともあるかと思えてしまう。しかし、抗いたい気持ちは根強く、本来、聞こうと思っていたことを口に出してみる。
「ナミに、ここの草木が生き生きしだしたのは、俺の影響だといわれたが、そんなことあり得ると思うのか? 俺は命を奪う側だぞ」
「……自分は、何でも見通しているわけではありませんので。確定はできませんが」
面倒くさそうな間があいてから、仕方なくといった口調で続ける。
「ナミが言っていることも一理あると思います。何か変化が起こったのならば、原因が必ずあるはずです。それは、突然、現れた悪さん以外には考えられません。自分にとって不本意な結果だからといって完全に否定するということは、殺せなかった相手に、なぜ意図通りに死なないのだ。ちゃんと死ね、と言っているのと同じではないですか。それが正しいかどうかの判断は、お任せします」
言われてみればその通りで、これ以上、反論したり、質問を繰り返すのは嫌な予感しかないとわかっていながら、止まらなかった。
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