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前に見たことのある、何か企んでいるニヤニヤ笑いを浮かべながら、ばあさんがとんでもないことを提案してきた。納得しきれない部分はあったが、その提案を胸に本殿へと戻ることにした。
どうやって戻るんだ、あの変な棚に入らないといけないのか?と疑問だったが、ただ玄関の扉を開けて外に出ればいいだけだった。一歩、外に出たはずが、そこは本殿の部屋だった。どうやら、自動的に引き戻される仕組みなようだ。
さて、戻ってきたが、どうするか。こー君がいないということは、もう夜なのか、もしかして俺を探しに行ってたりして…と考えそうになり、頭を振って蹴散らした。とにかく話をする必要があることは間違いないのだから、ここにいても仕方ない。
建物内を歩いてみたものの、誰もいない。冷静なまーちゃんの姿も消えていることが不可解だった。外に出て一周しようと思い、まずは鳥居とかいう門のようなものがあるところに向かうと、誰かが駆け込んできたのが見えた。
ナミだ。何を慌ててるのかわからないが、走りながら目の前まで距離を詰めてきた。あまりの勢いに、思わずのけぞってしまう。
「何をそんなに慌ててるんだ?」
「だっ…て、急に、いなくなる、から……も、もう、帰ってこないかと思ってぇぇ」
先ほどの勢いですべての力を使い果たしたように、その場に座り込んでしまった。謎すぎる行動にどう対処すればいいか検討もつかず、同じように座り込んでみた。
ナミはそのまま顔を上げようともしない。部屋に移動して話をしようと言おうとしていたとき、背後から「あーっ!!」という叫び声。見なくても、わかった。こー君だ。
「悪さん!? えっ、いるじゃん! いつ、戻ったの? あ、どこかに隠れてたの?」
こー君の後ろでは、まーちゃんが黙ったまま睨んでいるが、俺のせいみたいな顔をされるのは心外だ。ずっとここにいる理由はないので、ナミを連れて部屋に来いと言い残して、さっさと戻ることにした。
部屋で待つこと数分、ナミは入ってくると何もいわずに俺の前に座り、深く頭を下げてきた。
「何をしてる?」
「この間はごめんなさい。必要としているって言ったのは私なのに、わからない、なんて拒否するみたいなこと」
「どうでもいい。それよりお前が思っている男の心、手に入れてやろうか? 学校での居場所も確保してやる。その代わり、俺を解放する方法を見つけ出せ」
「……いらない」
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