3 意図せぬ力

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「うん。それを証明することはできないけど。私は、あ、だからか…と納得できたの。ここに来れば絶対にあると思っていたモノが、急になくなって。それは単に手にしていたモノがなくなったっていうんじゃなくて、うまくいえないけど……まるで、ある日、何の前触れもなく地面や空がなくなってしまったような。そんなこと起こるはずないってくらいの衝撃だった。おばあちゃんに、神様が消えた日かもしれないって言われたとき、わからないけど涙が溢れて止まらなくて。子供の私には、悲しいとかさみしいよりも、ただ不安で怖くて、どうしてって…もう二度と、こんなこと起こってほしくないって祈るだけだった。もし、ここに、あの空気が戻る可能性があるんだったら、私にできることはしたい。せっかく復活したこー君、まーちゃんを、もう消したくない。言葉は悪いかもしれないけど、先輩やクラスメートは別に私がいなくたって、消えたりしないし、何も変わらないんだし」 「ふうん。ナミの気持ちはわかった。じゃあ、ちょっとやってみたいことがある」  俺のほうから何か持ちかけるなどとは夢にも思っていなかったのだろう。最初は疑わしい目で話を聞いていたが、やがて、その目は輝いて、顔色も明るくなっていった。  ばあさんが提案したのは、「神社に人が集まるようにすること」だった。人間は個人では非力でも、集まれば大きな力を引き寄せる。ここが生命力に満ちた場になれば、その力にひかれて興味を持つ神が現れることもある得る。今、俺がここから出られないのはモノを食べたからというだけでなく、力を与えてくれる存在として草木や空気、すべてのものが執着しているのかもしれない。もし、そうだとすれば力が集まることで俺への執着が解かれて出られる…という可能性もある。  かもしれない、可能性。あやふやなことばかりで確かなことは何一つないけれど、わかっているのは、今のままでいても状況は変わらないということだけだ。
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