3 意図せぬ力

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 俺が風と光を何とか操り、少しずつ人が来るようになるまでには1カ月の時間を要した。  これまで経験したことのない意味不明な修行のようで、当然ながら悪戦苦闘を繰り返し、気づけばナミともしょっちゅうケンカをしていた。  神社に寄ってみようと思わせるにはどういう風がいいのかがわからないことには先に進まない。とはいえ、通りすがりの人で試すわけにはいかないので、まずはナミに神社の前を歩かせて試すことになった。  背中を押すような追い風にすると、「ちょっと、怖い怖い怖い! こんなのうす曇りの日にやられたら、霊体験かと思っちゃうよ」と悲鳴を上げられ、神社の存在を示すため鳥居から抜けるような風を送れば、「いやいや、ここを通るなって拒否してるみたいだし」と指摘を受ける。  一度、大ゲンカになり、怒りのまま風を吹かせたところ季節外れの強い北風が数日続いてしまい、異常気象だと話題になったらしい。ナミだけでなくまーちゃんにも責められたのは言うまでもない。特に、この辺で北風が強く吹き抜けていたようで、一部の連中が「何かおかしい」と勘づき、さらに近寄る人が減ってしまった。  さすがに猛省し、本来の目的を見失わず遂行することを誓った。というか、誓わされたのだ。恐ろしいことに、ナミまでが、「このまま人が来なければその分、悪さんはここにいることになる。私はそれでもいいけど」と脅してきたのだ。  俺の力を見せてやるとやる気満々になったが、必要なのは真逆のことだった。  強すぎる風がダメなように、冷たい風も熱い風も敬遠されることがわかった。つまりは頬をさっと撫でる、風が吹いてるとわかるくらいの強さで、人肌かそれよりわずかに冷たい風。生温かい風は強さに関係なく不気味がられる。なんとも微妙かつ曖昧で、少しでも力を込めすぎると乱れてしまう繊細さだ。力を抑えて、神経を一定に保つ。それが最大のポイントとなった。
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