4 悪と少年とナミ

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 もう少ししたら、ここから出て行くつもりだった。あの少年に気づくまでは。  桜のつぼみがほころび始め、春の彩りにみんなが浮かれている中、3、4才くらいの少年が神社の奥で膝を抱えて座り込んでいるのを見つけてしまった。最初はベンチが空いていなくて、適当なところで休んでいるんだろうと大して気にも止めていなかった。だが、じきにそうではないと判明する。  ベンチが空いていようが、神社に誰もいなくても、そいつは何かから隠れるように奥へと向かい、暗くなるまで、ただじっとしている。地面に絵を描いたり、虫を探すようなひとり遊びは一切せず、息を殺すようにして座ったまま動かない。うつむいていることが多かったが、たまに空を見上げる顔に覇気はなく、子供の無邪気さとかけ離れていて、なぜか気にかかる。細く小さい体なので3才くらいに見えるが、もしかしたら、もう少し上なのかもしれない。 「最近、少年が奥のほうにいるの気づいてたか?」  夕方、ナミが来たときに聞いてみると、答えは予想通り、否だった。 「ひとりでいるの? え、何かあったのかな?」 「さあ。人に会いたくないみたいだけどな。一応、言っておいたぞ」  少なくともナミは少年と話すことができる。単純にひとりでぼんやり過ごすのが好きだったり、友達作りが下手ということならば、同類のナミが友達になれば済む話だ。でも、そうではない何かを感じていた。木の上から何となくしか見ていないのではっきりしないが、まわりを、自分をも拒否せざるを得ないモノを抱えているようだった。
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