4 悪と少年とナミ

8/19
前へ
/72ページ
次へ
 少年とナミの距離は縮まらないまま2日が過ぎ、3日目、ナミがほんのわずか数センチくらい近づいたが、膝を抱えて下を向いている少年は気づかない。帰るとき、ちらりとナミの方を見るだけで逃げだす様子もなく、昨日と同じように歩きだした。これに気をよくしたのか、ナミは翌日も座っている間に少し距離をつめていた。  少年が帰った後、ナミが部屋に顔を出したので、「いきなり距離をつめすぎるなよ」と釘をさしておく。 「うん。ちゃんと意識してる。でも、下を向いてるけど、あの子の空気が少しほどけてきたような感じがして」 「それならいい。実際に近くで感じていることを信じるしかない」  話していると、ばあさんが来た。いつも朝か、昼間に来ていたので珍しく思っていたが、ナミの母親から、「ナミがそっちに行ってないか」と聞かれ、どうせ神社だろうと迎えに来たんだそうだ。 「それと、あの修復の話は延期になったから。今日も来たんか?」 「ああ。暗くなるまで膝を抱えてた」 「そうか。来てるならよかった。ここらへんを診てる医者に可能性の話をしといた。一応、もしもの場合を考えてな」  俺とばあさんの会話に入れず、ナミは不安げにキョロキョロしている。 「え、あ、あの、おばあちゃんも、あの子のこと、知ってるの?」 「この間、突然、悪さんが来てなあ。びっくりするわ。ナミ、その坊やを見守ってあげてな。ばあちゃんも、協力できることは何でもするし。そしたら、ほら、心配してるから帰るよ」  ばあさんに連れられるように帰っていった。その後ろ姿がなぜかさみしげに見えたが、気のせいだろう。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

66人が本棚に入れています
本棚に追加