堕ちたる才が紡ぐ未来

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ーーーーーーーー桜が満開であった。  公園では無く川沿いに咲き乱れる桜の下で、ブルーシートを囲う三人は周りから奇異の目で見られていた。 「長老がまだ寝てるぞ!サッサと起こそうぜ。折角の花見にオチョコ三杯で寝るなんて、歳は取りたくねぇな」  そう言い、鉢巻姿の男は日本酒をがぶがぶと水の如く喉に流し込んでいた。 「長老だって疲れてんだよ。でも折角の花見ってのは一理あるな、長老そろそろ起きて下さいよ。ノブが飲み過ぎで酒無くなっちゃうから」  そう言いメガネの男は、髭の伸びきった長老と呼んだ老人を抱き起すと肩を何度も揺すった。 「何だサラリー君じゃないか。もう少し寝かせてくれたまえ、何せ頭超痛いので」  老人は頭が痛いポーズをとりつつ、喉が渇いたと言った。鉢巻姿の男がグラスを渡すと一気に飲んんだ途端に噴き出した。 「ゲハ!これ酒じゃねぇか!殺す気か!ワシは酒弱いの知ってるじゃろ!魚屋!」  鉢巻き姿の男は魚屋と呼ばれ、眼鏡の男はサラリーと呼び合い、髭の伸びた老人は長老と呼ばれていた。  真昼間の河川敷沿いの酔っ払い三人は、俗にいう浮浪者と呼ばれる人々であった。
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