堕ちたる才が紡ぐ未来

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「のう、魚屋や」 「八百屋だ」 「まぁそう深酒はよさんか。折角の花見じゃ花も愛でんか、、、、、いや感が良いのう八百屋よ」  八百屋とサラリーは驚いた顔で見合うと、長老の背中を見た。  初めてだった。八百屋を魚屋と間違えず言った事が、それはつまり何か大切な話があると言う意味であった。  そして、八百屋の暴飲はその事を何となくではあったが感じ取り、何とか盛り上げようとした結果の行為でも有った。 「俺ぁ解んだよ、何人もの仲間を此処から見送ったんだ。長老出て行くんだろう」  答えなかった。その背中が”そうだ”と語っているかのように感じ涙が出そうであった。  声は無く。水のせせらぎと花の舞い散る音が辺りに響き、そこには三人しか存在しないかの様な既視感を憶えた。  暫くすると、コップに液体が注がれる音が聞こえた。酒を注いだのは長老であった。 「まぁ飲め!話はそれからだ、最後にはなるがお前らにも世話になった。だからちょっとしたプレゼントも用意しとるしのう」  老人の長話。と言うよりは此処に来てからの思い出話で、何時もの様に馬鹿笑いが辺りに響いていた。  酒もなくなり、ソフトドリンクとお茶を飲み酔いが醒めた頃になると、長老は自ら口火を切った。
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