記憶

　ここはどこだ？
　男は、ある朝目覚めると、自分が今一体どこにいるのかわからないことに気づいた。
　何もかもに見覚えがなかった。この布団は誰のものだ？　この部屋は？　何故私はここにいる？
　くそっ、よく考えるんだ。昨夜、私はどこで眠りについたのだったか……？
　男は思い出そうとした。必死で記憶の糸を手繰った。だが、何一つ思い出せることはなかった。それどころか、もっと重大な事実に気づいてしまった。男は、自分が誰であるかすらわからなかった。
　何たることだ！　私は記憶を失ってしまったのだ！　どうしてこんなことになったのだ……記憶が何一つない！