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男は途方に暮れた。どこにいるのかわからないまま、自分が何者かわからないまま、そうして男はしばらく呆然と虚空を見つめていた。
やがて、男は決然と立ち上がった。
こうしていても埒があかない。何か手がかりを探そう。この家のどこかに、記憶を取り戻すヒントがあるかも知れない。
男はゆっくりと、探り探り歩き始めた。一寸先も見えない人間のように。
実際、部屋は暗かったが、それ以上に、何が起こるかわからない不安があった。まるで立ち上がったばかりの赤ん坊さながら、男はふらふらと覚束ない足取りで歩を進めた。
男の心にあったのは、たった一つの疑問。
私はどこから来たのか――。
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