きいちゃんと 空のおとしもの

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「それじゃあきいちゃん、頼んだよ」 「まかせて!」  青鬼は両手をぐぐぐと伸ばし、右手に持った栓を穴に押し込みました。左手に乗っているきいちゃんもぐぐぐと手を伸ばして、栓に魔法のカギをさしてガチャリ!と回しました。すると栓と周囲が溶け合って、穴が空いていないところと見分けがつかなくなりました。  青鬼ときいちゃんが全ての穴をふさぎ終わると、やっと雪がやみました。 「ありがとうきいちゃん。これで当分安心だ。きっと明日は晴れるよ」 「やったー!」  小鬼たちも喜んでいます。  その時、ぐごごごご、と低い音が鳴り響きました。青鬼がそっとおなかに手を当てて言います。 「なんだか腹が減ったな」 「そりゃそうでしょう。さっき空っぽにしましたからね」  緑色の小鬼が呆れたように言いました。  きいちゃんのおなかも、ぐうとかわいく鳴きました。 「そろそろお家に帰らなくちゃ。パパとママがごはんを作って待ってるかもしれないわ」 「そうか。おまんじゅうをご馳走できなくて残念だ。  どれ、帰り道はわしに任せなさい」  青鬼は雲の端っこに腰を下ろすと、ぐいぐい押すように雲をこね始めました。すると雲がだんだんうすっぺらくなり、地面に向かってスルスルと伸びていきました。そうして長い長い滑り台が出来上がりました。  鬼たちは口々にきいちゃんにお礼を言いました。きいちゃんもみんなにお礼を言いながら、一人ずつぎゅっとハグをしました。黄色い小鬼のほっぺたがポッと赤くなりました。 「さようなら。また会いましょう」  きいちゃんは雲の滑り台に乗ってシューッと勢いよく降りて行きました。きいちゃんの横を、いくつもの雲が流れて行きました。  やがて町が見えてきました。お出かけや雪かきをしていた人たちが、空を見上げてにっこりしています。きいちゃんもそれを見てにっこりしました。  滑り台の終点はきいちゃんのお家の前でした。きいちゃんは、ぴょこんと上手に着地しました。  きいちゃんは魔法のカギでガチャリ!と玄関の扉を開け、中に入りながら言いました。 「ただいま!」  パタンと扉が閉まる時、ほんの少し風が起こりました。雲の滑り台はその風でゆらりと揺れたかと思うと、スーッと消えてなくなってしまいました。
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