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風の気持ちよさを感じた。ふわりとした感触が母との思い出を想起させた。昨日に引き続き変な体勢で寝てしまったので疲れが体に絡まる。ふと風の気持ちよさに違和感を覚えた。
「開いてる」
私の部屋に唯一ついている朝日が差し込む窓が開いていた。魔鴉がいない。私が勝手に開いた議事録もない。そこに広がる医療道具が昨日の出来事は嘘ではないことを教えてくれた。「元気になったんだ」
議事録もなくなり、治療していた魔鴉もいなくなったので私は裁かれることはないだろう。しかしその安堵ではなく別の安堵が私に訪れた。あの治療で治ったのだ。良かった。
私は疲れていたことが水のような何かに流された気がした。
医療道具をまとめて城に向かうことを決めた。
新薬投与から1日目。
今日は散歩することもできて少し元気があるように感じた。
特に異常は見られない。
「カノン。あの時の鴉はどうなったのじゃ」
「私が治療をした次の朝にはいなくなっていました」
「薄情な奴じゃな」
「いえ、そういうわけでもないんじゃないでしょうか」
「どういうことじゃ」
「私たち看護につくものにとっては幾千もの感謝の言葉よりも一度の元気な姿を見せていただくことが幸せなのであります」
「では私も早く元気にならなくてはな」
「はい」
また私の心の何かが傷ついた気がした。
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