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松野幸千恵
りりあちゃん、今年も来てくれたんだね。
松野幸千恵は絵本を入院中の子供たちに読み聞かせながら、その女の子に気が付いた。
『ハロウィン絵本よみ聞かせ会』と銘打って病院で朗読を始めて十年近く経つが、彼女は最初から幸千恵の朗読を聞いてくれていた。
いつも少し離れたところでじっと幸千恵を見つめていてくれた。
そして今日もまたそこいにいる、五年前と変わらぬ姿で。
あの日、読み聞かせが終わった夜、りりあの様態は悪化した。
彼女は生まれつき難病を患っていたのだ。
幸千恵がそのことを知ったのは翌年この病院を同じ朗読会で訪れたときで、看護師の一人が教えてくれた。
しかし、朗読を始めるといつもの場所にりりあの姿があった。
錯覚かと思ったが、りりあはその後も毎年必ず現れ看護師も目撃している。
りりあちゃん、ありがとう。また、来年……
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