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子供たちは看護師や親と一緒に会場に使われた部屋から出て行った。
出て行き際、子供たちは刹那と遙香、そして幸千恵に「ばいばい」と手を振ったり、「また来てね」と言ってくれたりした。
そして会場の部屋には三人だけが残った。
幸千恵が刹那の顔を見上げた。
刹那はうなずいた。
「まだ、りりあちゃんはいますよ」
読み聞かせが終わると彼女の存在は希薄になってしまった、幸千恵にはもう見えない。
刹那はりりあのいる場所に視線を向けた。
「りりあちゃん……」
切ないかすれた声で幸千恵が名前を呼んだ。
遙香が刹那にうなずいた。
「りりあちゃん、今日は大切なお話があるの」
刹那は屈んでりりあと目の高さを合わせた。
りりあは少し間をおいて小首をかしげた。
霊は生きている人間に比べて反応がだいぶ遅れることがある。
「幸千恵おばさんの読み聞かせ会、今回でおしまいなんだ」
また少ししてから泣きそうな顔になる。
「ごめんね、幸千恵おばさも本当はりりあちゃんにもっと読み聞かせをしたいんだよ。
でも……」
そこで刹那は言葉に詰まってしまった。
「幸千恵おばさんはね、声が……声がね、もう……」
涙が溢れ声が震える。
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