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予定よりだいぶ遅れて刹那たちは病院を出た。
今日は遙香の運転するジュークで来たので、幸千恵を家まで送ることにした。
自宅の前でクルマを降りると彼女は深々と頭を下げた。
「あのッ」
門を開けようとした幸千恵の後ろ姿に刹那は思わず声をかけた。
「わたし、ヒマなんです。妹のバーターじゃないと仕事が来ないし、妹はまだ中学生で当分はそっちを優先する約束で……
だから松野さんが許してくれるなら、わたしが『ハロウィン絵本よみきかせ会』を引き継ぎます」
刹那の言葉に幸千恵は驚いたようだ。
「約束です、必ず帰ってきてください。声がでなくったて構いません。
わたしが子供たちを笑顔にする朗読ができるようになるまで、ちゃんと指導してください」
驚いていた幸千恵だが嬉しそうに力強くうなずいた。
「まったく、お金にならない仕事ばかりやろうとするんだから」
隣の席で遙香が嬉しそうにぼやいた。
─了─
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