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 少しして看護師に案内され一通り検査を済ませると、問題はなさそうだということで退院することになった。目が正常に見えているかなどの検査を機械的に行ったが、マナを見ることができることはバレることなく終わった。  イアンは家に向かって歩きながら目に映る人々を眺めた。人によって纏っているマナの見え方が違う。イメージ的には人それぞれがマナを有していてそれをオーラのように纏っているというよりは、空気のようにどこにでも存在しているマナを人それぞれが無意識のうちにすぐに使うであろう分を自分の近くにある程度まとめているという感じだ。  植物の周りにもマナが見える。植物も生きているのだなと改めて思った。  感慨に耽っていると突然近くでバンッと音が聞こえた。音のした方を見ると路上を走るマナを動力としている誰もが使う乗り物の一台が後ろの乗り物に追突されていた。 「おい! 危ないだろ!」 「すまない、突然動かなくなったと持ったら今度は突然動き出したんだ」 「ああ、最近問題になってる不具合か。……こればっかりは運転手の操作ミスってわけでもないし俺も文句は言えねえなぁ」 「でもさすがに危ないよな、この不具合の問題が解決するまでもう乗らない方がいいのかもしれないなぁ」  事故が起きた二台の運転手が話し合っている。イアンは二台の乗り物を見ると、不具合を起こした方の乗り物に異常があることに気が付いた。普通に辺りを走っている乗り物と違い、不具合を起こした乗り物は見えるマナの動きがおかしかった。この乗り物は大気中からマナを吸収し、そのマナをエネルギーとして扱う仕組みになっているのだがそのエネルギーに変換するためにマナを溜め込む部分にうまくマナが供給されていない感じだ。  いったい何が起きているのだろうか。そう思いながらイアンは顔を上げると遠くに見える世界樹にもどこか変な感じがした。世界樹の場所まで少し遠いがとりあえず近くで見てみようと思い走る。
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