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 アレンは息をついて黙る。アレンはイアンには何を言っても無駄だと思った。きっと、ありえない理想を抱えたまま考えを頑なに変えようとしない。どうせイアンは魔力がなく魔法が使えないためマナがなくなった後のことを安易に考えているんだ。しかしどちらにしろ魔法が使えないのなら自分で世界樹を封印することなんてできないはず。つまりこの場からアレンが立ち去ってしまえば状況が変わることはない。しかし問題は、イアンの言う世界樹が危険な状態にあるという話を他の誰かが信じた場合だ。そうしたらその誰かが封印を手伝うなんて言う愚行を冒す可能性がある。それは避けたい。  アレンは行動を起こした。 「イアン、すまない」  アレンは勢いよく右手の人差し指をイアンに向けて振る。が、バチンと音が鳴っただけでイアンの身には何も起こらなかった。 「……なっ!?」 アレンはイアンがなにかカードのようなものを構えていることに気づく。 「それは……?」 「魔術。その昔、僕みたいに魔力のなかった人がそれでもマナを操るために身に着けた技術だ。陣や紋様、文字の力を使ってね」  イアンは図書館でマナや世界樹について調べている傍ら、マナの使い方関連で調べている途中で出てきた魔術についても世界樹の危機への対応策の一環として使えるかもしれないと入念に調べていた。 「……そんなものが。……てことは、尚更お前をこのままにしておくわけにはいかないということだな!」  アレンは再び右手の人差し指をイアンに向かって勢いよく振る。しかしまたしてもイアンに魔術で弾かれる。アレンは激しく右に左に走り動きながら何度もイアンに向かってマナを飛ばす。イアンはそれでもそれを全て弾く。  アレンはこのままでは埒が明かないと思った。 「さすがにここまではしたくなかったが…………」  アレンは体の前で両手をバチンと叩き上にあげ、魔法で大きな炎を生みだし投げるようにしてイアンに放った。
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