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「それでは皆さん、魔法で火を点けてみてくださーい。はい、せーの!」  学校でのとある授業の一つで先生が一般的な魔法の使い方について教えている。先生の指示に従い、生徒の少年たちが自分たちの目の前の空中にボウッと火を点けて浮かせた。しかしその生徒の中に一人だけ火を点けることができていない人物がいた。 「イアン! イアン・ワーカー!」 「……はい」 「まーたあなたは、なんでこんな簡単なことができないの! マナに魔力を使って火を点けるだけでしょ!」  ベチンッと頭に何かで叩かれたような痛みが走る。先生曰くマナを魔力で操り、質量を持ったような衝撃を与えているとのこと。マナと魔力を使えば、火を点けたり叩いたりだけでなく色々なことができるようだ。これを魔法と言っている。  イアンは毎度のように授業で先生が指示する通りにしても魔法を使うことができず、叱られていた。 「…………」 「黙っててもなにも始まらないわ! ほら見てみなさい」  イアンと呼ばれた生徒は先生の指差した方を見る。 「アレン・パルスなんて同時に何個も火を点けているわ。あれを近くで見習ってきなさい!」 「……はい」  周りの生徒たちはイアンの方を見て馬鹿にしたようにクスクスと笑っている。イアンは悔しさを噛みしめながら先生に言われた通りアレンの隣の席に移動し、アレンの思うままに熟していく魔法を見ながら授業をじっとやり過ごした。
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