37.5℃の熱情

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 すかすかになった空間に誰か居て欲しいという、誰か代わりになるあの子が欲しいという、本当に独りよがりな我儘(わがまま)。  二人とも、条件に合致するならこだわらない。  つまるところ、都合よく自分の隙間を埋めてくれる存在であれば。  男か女かすら、どうでもいい。 「俺に、悪者になれって?」  ロングヘアのウィッグを取って、低い声で囁きななを覗き込んだ。まだエアコンが効ききらない室内でつたう汗が、ぽたりとななの額に落ちる。 「さあ? なんのことかしら」  じっとり汗で張り付いた俺の短髪を見ても尚、ななはそう(うそぶ)いた。  微熱のような7月の気温は、盛りのついた高校生にちょうどいい。  体温だか気温だか分からない温度は、一線を超えたという事実を有耶無耶(うやむや)にして誤魔化せるから。  それにしても、暑い。  こんなんじゃ、外が暑いのか、俺が熱いのか、わかったものじゃなかった。  あーあ。  誰か、いないかな。  熱がなくたって、ただ君がそこにいるだけで、俺の正気をなくしてくれるような、ヒト。  ななを前にして、これが酷い思考だってことはわかっているけれど。  ななだってほら、どうせ似たようなことを考えているに違いなかった。  正気と狂気の間を彷徨(さまよ)い、ギリギリどうにか正気な頭で、どうしようもない狂気を装う。  こればっかりは、注射したところで治りそうにない。  だってほら、思考がグズグズなくらい、こんなにあついんだから。  俺たちが狂ったって、仕方ないよな?
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