0人が本棚に入れています
本棚に追加
「どこの学校か一目でバレるのって、嫌じゃない?」
「むしろ便利よ。偏差値の高いお嬢様学校 の制服は、着ているだけで相手へ安心と信頼を与えるからね」
「……なるほど」
「それに、やましいことがないならバレても別に問題はないでしょう」
やましいことは現在進行形で重々あるのだが、と思ったところで、ななに手を掴まれた。
指を絡ませて、彼女はにやっと笑む。
「だから言ったでしょう、女子高生が二人でいる分には――咎められやしないのよ」
上気した頬でななは妖艶に告げた。
繋がないと言ったくせに。
熱に浮かされている。
ただの友情と、それを通り過ぎた感情は、ぱっと見、見分けがつかない。
ななは、その名の通りに7月生まれで、おまけに7日生まれだった。二週間ちょっと前に誕生日を迎えた彼女は、しかしよりによってその日、本命のカノジョが別の女と懇ろにしている姿を目撃したらしく。
盛大に拗ねた結果、現在こうして、たまたま知り合った自分こと恵と浮気中である。
しれっと突飛な状況だけれども、女子校で同性ばかりの環境だと、同性同士の恋愛沙汰はそこまで珍しくもないようだった。まぁ、かく言う自分もそうだから分かる。
今のところ、ななとはまだ不純な交友ではないが、世間を揶揄したさっきの彼女の指摘はもっともだった。不純同性交友は異性相手よりステルスしやすい。
本命の彼女の代役であるところのめぐは、その役割に相応しく、ななと当たり障りのない会話を重ねる。
「実家には帰らないの?」
「そのうち帰るけど。まだいいかな」
地方を出て、中学から都会の学校に進学して四年目。
帰らないほど嫌ではないが、長居するほど余裕はない。
地元は、思い出すことが、多い。
「8月になったら、お盆には帰るよ。お墓参りをしなきゃいけないし」
「そう。大変ね」
何の気なしに彼女は相槌を打つ。
知りようもない。話してなどいないのだから。
今年はあの子が死んで9回目のお盆だ。
最初のコメントを投稿しよう!