1人が本棚に入れています
本棚に追加
「いやなに、経緯をちゃんと説明するから落ち着け」
「は、はぁ」
「モスモスも最近言ってたろ? 勇者多過ぎじゃねって。それは儂然り魔王軍全員が思ってたことだったんだよ。それで儂があの腐れ外道へアイちゃんに手を出した罰として一人で人間族の王国……名前なんてったかなー……あぁ、ヘリオスだ。ヘリオスに単独で勇者が増えた理由を探って来いって言ったんだよ」
ヘリオス王国か。確か殆どの勇者がヘリオス出身だったな。詳しくは知らんが。
因みにアイちゃんとは魔王様お気に入りのメイドさんで、腐れ外道とはそのアイちゃんに手を出してしょっ引かれた三魔皇の一人、ベル・ブブという野郎だ。
「でよ、その結果、勇者育成機関として王都にでっかい魔法学校が出来れるらしいのよ。腐れ外道の話だと結構危ないみたいだし、モスモスに潰してきて欲しいなって」
「な、成程……それで現在に至るというわけですか」
「そそ」
思わず俺は頭を抱えそうになった。
考えてみて欲しい。ベルの〝お仕置き〟としてヘリオスに単身で送り、勇者が多過ぎ問題の原因を探らせてきたんだろ? それが何故お仕置きに選ばれたかって、敵が密集している地帯に一人なわけだからバレたら結構やばいからだろ? で、だよ……何で俺そんな危険なところに行かなきゃいけないわけ? 今度は俺が人間族たちに袋叩きに合う可能性大じゃん! 何で!? 俺が何した!?
――なんて言える筈もないから、俺は上げていた顔を下げ短く返答を返した。
「んー、不服そうだな」
「い、いえ。とんでも御座いません。魔王様のご命令とあらば」
魔王様の身動ぐ音がし俺は全身に力を入れ直す。
幾ら魔王様が俺を気に掛けてくれているとは言え、命令に逆らえば反逆罪として死刑も免れない。今の魔王様に限ってそんな事は先ず無いだろうが。
「でもな、これにはちゃんと理由があるんだぞ?」
「理由、ですか」
最初のコメントを投稿しよう!