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「そそ。そもそもだけど、モスモス強すぎて武装した人間だらけの所に投げ入れたとしても死にはしないでしょ? だから儂としてもこの重大な任務に投入しやすいってのが一つと……」
言葉に区切りを入れた魔王様。そのあまりの長さに痺れを切らしてしまった俺は、少しだけ顔を上げた。すると、目の合った魔王様がニヤリと笑い。
「モスモス、人間とか亜人とか好きでしょ?」
「なっ!?」
と又もやしたり顔で仰られた。
ま、まさか。俺は吸血鬼の始祖だぞ? 実際は言われてるだけで違うけど、そういう事になってるのに……人間が好きなんてッ。そんなまさか。
「まーまー、言わなくても分かってるからさ! 勇者殺す度に毎晩魘されて、殺した人間や亜人達の名前を紙に書いて残してるのも知ってるから!」
「え!? 嘘ッ!? ちょっ」
「今回の任に関しては、殺しは無しだから安心して。それと、やっぱり儂ら魔王ってのは真の勇者に殺されるのが仕事の一貫みたいなところあるし、有望な奴には稽古つけてあげて。それが居なければ学校潰してもいいからさ」
知られたくない俺の習慣を暴露され慌てるも、それを楽しそうに無視した魔王様が矢継ぎ早に話を進めていく。最初は潰してって仰っていたし、完全に人間族の国を支配しにかかるのかと思ったが、全く見当違いも甚だしい内容だった。
勇者育成機関を設けている魔法学校に潜入、といった内容か? それは俺がそこで学生をやれってことか? この見た目で? 自分で言うのもあれだが、完全に学生のそれとは見た目かけ離れてると思うけど。人間でいう所の成人して数年経ったくらいの風貌だと思うんだけど!
心の中で幾ら泣き叫ぼうが、そんな事知ったこっちゃないと魔王様は俺の王国行きの手続きを片手間で終わらせていく。このままだったら本当に俺は――!
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