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「魔王様!」
「おう、どしたの」
「いや、どしたのではなくてですね……失礼を承知で申し上げますが、私は人間殺しが大好きで御座います。それもやはり吸血鬼ですから、人間族から吸血するのがそれはもう楽しく手楽しくて。特に若者の――」
「はいはい、了解」
「いやいやいやいや!」
クソぅ! どうにでもなれと嘘を並べてもやはり見抜かれるか!
思惑を瞬殺された俺はいつの間にか立ち上がってしまっていた身体を再度沈め、何か手はないかと必死に考える。
このまま俺が向こうに行ってしまえば――誰が書類作業を進めるんだ! 勇者の討伐は!?
しめた、これだ! と思い顔を上げるが、俺より早く魔王様が口を開く。
「あ、書類は儂がやるから安心して。元々儂の仕事だったし。勇者関係に関しては腐れ外道を無理やり拘束してやらせるからだいじょうびよ」
「オォ……」
完全敗北とはこういう事を言うのだろう。全ての抜け道を塞がれてしまった俺は、泣く泣く任の阻止を諦め魔王様の手続きが終わるのを待った。途中頂けない内容を魔王様が仰っていた気がするが、この際どうでも良い。俺の請け負っていた仕事全てベルに投げてしまおう。そうしよう。
項垂れた俺を見て魔王様がクツクツと笑っている。チラリと下がった視線を上げてみると、やはりと言ったように魔王様のお顔は嬉々とされていた。
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