プロローグ この世は勇者で溢れてる

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 ガコンッ! 「我こそは勇者なり! 貴様ら薄汚――」  俺だけ低賃金で仕事させられ過ぎじゃね? ってこと。  何となく勇者が俺の仕事部屋の前に待機しているのを察した俺は、仕事机に山を作っていた書類たちを一旦浮遊魔法で背後の書類棚へ片付た。  すると案の定扉が開かれ、自称勇者の狐男が現れたのだ。そこで仕事が早い俺ってば、奴の言葉を聞く前に〝真空刃(エアカッター)〟という魔力を刃のようにして飛ばす魔法で首チョンパ。厄介事を秒で片付けてしまった。  そして訪れる勇者パーティーと思われる二人と俺との間での神妙な空気。しかし勇者は空気を読まず首から噴水のように血を流して膝から崩れ落ちる。それから数秒経って吹き飛んでしまった奴の頭が俺の部屋のど真ん中に落っこちた。  瞬間――。 「モ、モブスッ!」 「…………!」  魔術師と思われる女が首のない勇者へ駆け寄り抱き起す。仮に俺があいつの立場だったら絶対近づかないけど。だって汚いじゃん、あの血。  それから明らかに泥棒っぽい見た目のオッサンが顔を真っ赤にして俺を睨みつけてくる。それよりお前、口元の液体どうしたと問質してやりたい気持ちです。  何となく一連の流れで奴らの力量が大体つかめてしまった俺は、力を入れていた身体を楽にして思いっきり溜息を吐き出した。そりゃもう盛大に、ね。だって、いくら相手が勇者パーティーだったとしても、あんなショボい不意打ちを避けられないような勇者がリーダー何だぜ? しかも真空刃(エアカッター)って名前こそ格好良さげだけど、実際は魔法使える奴だったら誰でも習得できるような第一位階以下の超初歩魔法だぞ。そりゃ仮にも魔皇の俺が使用したわけだから威力は初歩を越えてるにしても、避けられない速さで放ったわけじゃない。あれは俺による勇者への歓迎プレゼントみたいなものだしな。それを諸に受けちゃうような奴が勇者って……冗談も大概にして欲しい。
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