一話 吸血鬼、王国へ行く

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 泥棒男達を殺して七日という時間が流れた。その間あらゆる仕事をこなしていた俺だが、一番カチンときたのは〝魔皇の二人がいない〟という事。それだけだといつもの事だが、肝心なのは勇者を待ち受ける仕事(・・・・・・・・・・)の間に自分の配下を待機させていたという事だ。という事は、あの泥棒男達が倒したと思っていた魔皇は本物ではなく偽物。  それを記した書類を見つけた時は思わず発狂してしまった。  そりゃあんな糞雑魚が紛れる筈だよ。だって今まで相手した中で一番弱かったし。続けてきたミツなんたらって吠えていた勇者も糞雑魚だった。内心こんな勇者まで排出して、人間族そんなに追い込まれてんの? って少し心配してたし。そりゃそうだよな。そりゃそうだ。  なんて発狂の後大爆笑に変わり、近くを通ったメイドさんや執事が「あ、あいつ遂に壊れた」って目で扉から覗いてたの、俺は一生忘れない。  とまあ、そんな俺が苛ついたって話は置いといてだ。俺は今魔王様から呼び出されて玉座の間に訪れている。何でも俺に頼みたい事があるとかないとか。伝言を頼まれた執事さんは「連れてきて」と言われただけみたいだったから詳しい内容までは分らん。  玉座の間にて、魔王様の周りに隊列しているのが使用人数名という事に若干驚きつつ、俺は魔王様の足元(といっても結構遠い)に膝を着き、お言葉を待つ。 「んー。モスモス、毎回言ってるけどそんな恭しくしなくていいよー? 儂チョー寂しいんだけど」  本当に毎回の事だ。そんな事を言われても相手は〝王〟だ。頭下げるのが当然だろう。 「滅相もございません。(わたくし)は貴方の忠実なる僕。お言葉では御座いますが、魔王様を御前に顔を上げて待機するなど……」 「って言ってもモスモス、儂より強いんだから誰もそんなの気にしないと思うよ? そもそも儂が王になったのって――」 「魔王様、失礼を承知で申し上げますが……今その話は控えた方が宜しいかと」 「……ハァ。はいはい面を上げー面を上げー」
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