第十二話「発覚」

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 そこで急に一砥が笑い、花衣は「どうしたんですか」と訊ねた。  一砥は声に笑いを滲ませて、「初めて君を家に泊めた日のことを、思い出した。即席で肉うどんを作ってくれただろう。あれがすごく旨かったなと」と言った。  花衣は照れと嬉しさに顔を赤らめ、「あんな簡単なの……、一砥さんが食べたいと言えば、いつでも作ります」とわざとぶっきらぼうに答えた。 「そうか。ならまた近々作ってもらおう」 「はい」  たったそれだけのやり取りだったが、花衣はすっかり機嫌を直し、笑顔で通話を終えた。  そこでふと顔を横に向け、「わっ」と声を上げる。  いつの間に起きたのか、亜利紗が戸口に茫とした顔で立っていた。  そして亡霊のような白い顔で、言った。 「お腹……空いた……」  その呑気な台詞を聞いて、花衣は大きく噴き出した。     
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