第十二話「発覚」

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「どうも実家で何かあったらしいんだ。家出したことも、奏助にも理由を話したがらないらしい。ただの親子喧嘩ならいいが、ずっと元気がないと奏助が心配していた。俺も忙しくて亜利紗とはろくに顔も合わせていないんだが、君は本人から何か聞いていないか」 「いえ、私も何も……」 「……そうか。君にも奏助にも話せない悩みなのかな。なら、紫苑にでも聞いてみるか」  一砥の独り言のような台詞は、意外なほど花衣を傷つけた。  自分としては亜利紗とかなり親しくなれた気でいたし、だからこそ学校の友人にも話さなかった家庭の事情を打ち明けたのだが、もしかすると親友気取りでいたのは自分一人で、亜利紗の方はそこまで自分を近くに感じてくれていなかったのか。  家出していたことも今日初めて知ったくらいで、結局亜利紗が本当に心許しているのは紫苑一人で、自分はそこまでの間柄ではなかったのか……。そう思った。 「あの、でも……」  個人的な感情に蓋をして、花衣は亜利紗の立場を思って口を開いた。 「ひょっとすると、紫苑さんにも相談していないことかも……。それに本人が周りに話したくないと思っているなら、あまり突っ込んで聞くと、逆に追い詰めることになりませんか」 「ああ、そうだな。だが一応、紫苑には聞いてみるよ。とりあえず今日は、君が付き添ってやってくれ。食事はどうするつもりだ?」 「えっと、ある物で適当に作ります」 「ああ、奏助の家の冷蔵庫なら、色々食材も揃ってるはずだ」     
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