3人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
推しの舞台に行く理由
私には密かに思いを寄せている人がいる。
その人に最初に会ったのは若手俳優のファンイベントだった。
彼女はキラキラしていた。立ち居振舞い全てが輝いて見えた。彼女が話すたび、彼女が動くたび、何かキラキラした妖精の粉のようなものが見える。
いや、本当はそんなわけないのに私にはそう見えた。気がつくと彼女を目で追っていた。
グッズ販売の列に並んでいた私は彼女に見とれて惰性で前に進んでしまった。そのせいで前の人にぶつかった。その人に必死で謝っていると
「あのこれ。落としましたよ」
声のする方を見ると彼女が笑顔で立っていた。やっぱり見える。キラキラしている。しかもベビーピンクの紗がかかって彼女の笑顔はイチゴ味のマシュマロみたいだ。
「あっ、ありがとうございます!」
慌ててお礼を言った。声がうわずった。顔が熱い。赤くなるのがわかった。
ぶつかった拍子に落してしまったアクリルキーホルダーを彼女が拾ってくれたのだ。彼女はそれを私に渡すと、キラキラ光る妖精の粉とふんわりと甘い香りをふりまきながら行ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!