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「それはしょうがないさ。何てったってモノが良いからね! 学校の長年使い古してきたものではない。まだまだ新しい楽器なんだから」
本来は吹奏楽部に入部すると希望の楽器を聞かれ、学校にその楽器があればそれを使用することになっていた。
ただし、俺は中学入学と同時にトランペットを買ってもらったため、部活ではそれを持ち込んで使っている。そしてそのマイ楽器を購入した店が、クレアン楽器店だった。
「君に馴染んだ時の音色を早く聴きたいもんだな~。期待しているよ、湊くん」
「はい!」
これからも長く付き合っていくことになる相棒。絶対に吹きこなさなければ。
決意を固めている俺を他所に、相太さんは電話応対のため店の奥に引っ込んでしまった。そろそろ帰ろうかなと店のドアに向かって歩き出す。
それと同時にドアが開き。
「……えっ?」
「なんであんたがここにいるの?」
入ってきたのは日高だった。あからさまに場違いなやつがいる、って感じの目をしている。確かにあながち間違ってはいない。
「いや、俺は注文してたオイルを取りに……」
袋から出して彼女に見せる。学校指定のT2オイルではない、メーカー専用の小さなオイル。
「ああ……それね。ふーん、あんたが注文してたんだ」
何やら意味ありげな言葉を残して、彼女は相太さんのいる店の奥へと入っていった。聞こえてくる会話からして、どうやら知り合いのようだ。相太さんの声も弾んでる。
反して俺は、会話を終えた今も早まった鼓動を響かせる心臓の音を聞いていた。
妙な気分だな、と思いながら首を左右に振る。何だか自分の行動にモヤモヤすることが増えたな……。ええい、忘れろ忘れろ!!
説明のつかない思考を振りきるように深呼吸。足早に店を後にした。
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