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「今月は、ちゃんと払ってるし……」
「お、屋内配線の点検に伺いました!」
「何だ、最初からそう言いなよ。まあ、あがんなよ」
「失礼します!」
とぼとぼと歩く白衣の老人男性は、きびきびとした元気な彼を、レジの裏手にある在庫置き場へと案内した。いかめしい導管や、古めかしい配線があちこちに伸び、さながら、壁面に向かってツタが絡まっているように思えた。
「君、若いねえ……トシいくつ……?」
「今度二十歳になります!」
「あ、そう……道理で元気なはずだ……」
「まあ、元気だけは取り柄っすねえ」
「うん、うん、若いうちは、そう来なくては……」
「じゃ、じゃあ、これ、今から調べさせていただきますね」
すこぶる元気な彼は、カバンから測定器を取り出すと、そのからまったツタと向かい合った。しばしの間、それら配線群を感心したように眺め回していた。
「うあー、どこがどうなってんだろ」
「……」
「参考までにお訊きしたいのですが、この建物、いつから建ってるんですか?」
「確か、昭和十年ごろだと思うよ……」
「そ、そうなんですか! うわああ……こういっちゃ何ですが、何もかもが年代物ですねえ!」
「……ああ、物心ついた時から建ってたから」
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