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白衣の中年男性は、困ったような顔をして、腕組みをしてしばらく考えていた。
「……ダメ……ですか?」
「……仕方がない、おやんなさい」
「済みません、助かります」
彼は、分電盤のブレーカーをバチバチと落としはじめた。数にして三、四十個はあっただろうか。周囲が次第に暗くなり、灯りは、彼が照らす懐中電灯だけとなった。
「あ、あれ? お、おかしいな」
「なんだね」
「これ、何でしょう……これ、活線ですね」
「カッセン? カッセンって何のことですか」
「この線、ほら、ここ、電気流れてます」
「まさか……君が止めろというから、何もかも停めたはずじゃないのか……」
「どこへ流れているんでしょう」
「どこへって……君のほうがプロじゃないか、何を言ってるんだ……」
「ここだけ、ほら、主幹の配線に直接つながってます」
「じゃあ、その配線のもう片方は、どこへ向かっているというのかね」
「ここから、こう這っていって、ここで下に降りてます」
「下?」
「はい、どうやら、床下です」
陽に灼けた指が、床を指し示していた。
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