古風な薬局の意外な地下

4/4
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
 白衣の中年男性は、困ったような顔をして、腕組みをしてしばらく考えていた。 「……ダメ……ですか?」 「……仕方がない、おやんなさい」 「済みません、助かります」  彼は、分電盤のブレーカーをバチバチと落としはじめた。数にして三、四十個はあっただろうか。周囲が次第に暗くなり、灯りは、彼が照らす懐中電灯だけとなった。 「あ、あれ? お、おかしいな」 「なんだね」 「これ、何でしょう……これ、活線ですね」 「カッセン? カッセンって何のことですか」 「この線、ほら、ここ、電気流れてます」 「まさか……君が止めろというから、何もかも停めたはずじゃないのか……」 「どこへ流れているんでしょう」 「どこへって……君のほうがプロじゃないか、何を言ってるんだ……」 「ここだけ、ほら、主幹の配線に直接つながってます」 「じゃあ、その配線のもう片方は、どこへ向かっているというのかね」 「ここから、こう這っていって、ここで下に降りてます」 「下?」 「はい、どうやら、床下です」  陽に灼けた指が、床を指し示していた。     
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!