セイレンインマ!?

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 バスさんの柔らかな表情が急に硬くなった。  シスターであるワタシが恋をしただなんてあり得ない。  あってはならない。  そりゃあ、バスさんはステキな人だとは思うけど。  第一バスさんは娼婦のような女が好みなんでしょ。  今朝のあいつみたいな。  全く、夢にしても随分とタチが悪い。  ワタシは意地悪な悪魔にでもからかわれているのかな。 「ご自身でもお気付きになられていない様子ですね。  異性に対してそれなりの過去をお持ちなのでしょう。  何せシスターになられたくらいですから」 「あの、バスさん」 「何でしょう?」 「ここが夢の中だという事は理解……しました。  ではなぜ、バスさんはごく普通にワタシと会話しているのですか?」 「それは……」 「意味のないただの夢なら、ワタシは覚めるのを待つだけですけど」  バスさんはワタシから目をそらし、黙り込んでしまった。 「……いいでしょう。  モニクさん。  まずはあなたに、私の正体をお見せします。  驚かないでくださいね」 「正体? それはどういう……」 「あまり人前でこの姿にはならないのですが」 「えっ!? ツノ!?」  瞬く間に、バスさんの頭に一対のツノが生えた。  それだけではない。  背中にはコウモリのような黒い翼。  足の間から、先のとがったシッポが見える。 「これでお分りいただけたでしょうか。  ご覧の通り、私は人間ではありません。  私は夢魔。  女性の精力を吸って生きる淫魔なのです。  男なのでインキュバスとも言いますね。  だからこうしてあなたの夢に介入できている。  私は、モニクさんのようなシスターとは対極の存在。  本来なら決して関わってはならない立場なのです」
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