セイレンインマ!?

4/6
前へ
/39ページ
次へ
「え?」  バスさんの声が遠ざかった。  恐る恐る目を開ける。  彼はベッドから離れ、こちらに背を向けていた。 「私はモニクさんに指一本触れるつもりはありません」 「どうして?」 「気になりますか? でも安心してください。  何も、モニクさんに魅力を感じないからではない。  私は……少なくとも私個人は、人間と対等の存在でありたいからです。  私は淫魔と人間の共存する社会を目指しています。  多くの淫魔たちにとって人間は捕食対象でしかない。  あなたたちで言うところの牛や鳥、言ってしまえば家畜です。  私はそれを良しとしません。  だから私は、モニクさんを堕とさない」 「清廉……なんですね。  淫魔なのに」 「本来なら、神に仕える身のあなたこそが清廉であるべきだ」 「う……」 「責めるつもりはありませんよ。  性は、生き物が持つ一面なのですから。  何なら全て私の仕業という事にでもしておいてください。  どこまで行っても、たとえ清廉であろうとも、私は淫魔なのですから。  それではそろそろ失礼します」 「あの!」  ワタシが声をかけると、バスさんはドアノブをひねる手を止めた。 「結局、バスさんは何をしに来たんですか……?」 「モニクさんが私に恋をしてしまった事。  私は淫魔であり、シスターのあなたとは関われない存在である事。  そして、私は人間と対等でありたい。  勿論モニクさんともね。  これらをお伝えするためです」 「それじゃあ、もう会えないのですか……?」 「明日になれば分かりますよ。  それでは改めて失礼します。  モニクさん」 「……はい」 「良い夢を」  バスさんの笑顔を最後に、ワタシは深い眠りへと戻った。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加